湿度が石鹸の減り方に与える影響——一月計測メモ
一月というのは、東京あたりでは室内が乾燥しやすく、暖房を入れっぱなしにしている家では湿度が三〇%台まで落ちることが珍しくない。浴室も例外ではなく、夜のうちに石鹸がカチカチに乾いて、翌朝使うとき表面がパリッと割れるような経験をしたことがある人は多いはずだ。石鹸レビューを書く立場として気になるのは、その乾燥が石鹸の減り方にどれほど影響するのかという一点だった。重さの変化なら数値で追えるし、湿度計があれば条件も記録できる。そこで一月のまるまる一ヶ月間、いくつかの固形石鹸を浴室に置いて、毎朝重さと湿度をメモすることにした。
計測を始めたのは、レビューを書くときに「見た目で何グラム減った」と書くことが多いけれど、実際のところ何を基準にしていたのか曖昧だったからだ。石鹸は使うたびに少しずつ溶け、表面が削れ、香りが飛ぶ。その減り方は湿度と温度で大きく変わるとされているが、自分の手元で数字を取ったことがなかった。一月は一年で最も湿度が低い時期にあたるから、もし差が出るならこの時期が一番分かりやすい。そう考えたのも理由のひとつである。
計測のきっかけと方法
使ったのは、台所用として出回っている小さなデジタルスケールである。精度は〇・一グラム単位で、毎朝同じ時間帯、同じ場所に石鹸を載せて重さを記録した。湿度は浴室の壁に掛けた温湿度計で毎朝七時の値を読んだ。対象にした石鹸は、ペリカン石鹸のスタンダードな固形タイプ、カウブランドの赤箱、無印良品の枠なし石鹸、そしてロクシタンのシーツソープ。それぞれ新品を用意し、一ヶ月間ほぼ同じ条件で使った。
重さの記録は、浴室に置いてある石鹸を一つずつ朝に測るだけという単純なものである。ただし、測った後にすぐ使うのではなく、必ず使う前に記録するようにした。濡れたまま測ると水分が残って正確に測れないため、軽くタオルで表面を拭ってから載せている。湿度は、浴室全体の相対湿度を一つの数字で代表させるしかないので、場所による偏りは諦めるしかない。それでも日々の平均的な傾向はつかめるだろうと判断した。
一月の室内湿度と石鹸重量の変化
一月の浴室湿度は、朝の時点で三五%から五五%程度の範囲で動いた。天気の良い日に換気をすると三五%を下回ることもあり、雨の日は六〇%近くなることもあった。石鹸の重さの変化は、湿度の上下とかなりはっきり連動していた。湿度が高い日は一日の減りが〇・三グラムから〇・五グラム程度、湿度の低い日は〇・一グラムから〇・二グラム程度になる。数字で見ると、湿度の差で減り方が倍近く違うことが分かる。
特にはっきりしたのが、週単位で見たときの減り方のカーブである。最初の二週間は比較的乾燥した日が多く、平均して一日〇・二グラムほどの減りだった。次の二週間は曇りや雨の日が増え、平均が〇・三グラム近くに上がった。一ヶ月通した平均は約〇・二五グラムである。ただし、これは一日に一回使った場合の数字であり、人によって使用回数が違うので、あくまで目安として見ていただきたい。
固形石鹸ごとの減り方の違い
石鹸の種類によって減り方にはっきり差が出たのは面白い結果だった。ペリカン石鹸は硬めで、一日の平均減りが約〇・二グラムと最も少なかった。カウブランドの赤箱はペリカンとほぼ同じだが、湿度の高い日は少し溶けやすく、最大で〇・四グラム減った日もあった。無印の石鹸は真ん中くらいで、平均〇・二五グラム。ロクシタンのシーツソープは一番柔らかく、平均〇・三グラム、湿気の多い日には〇・五グラムを超える日もあった。
この差は原材料と製造方法によるものだと推測できる。植物性油脂を多めに使っている石鹸は溶けやすく、保湿成分が多いものも柔らかくなる傾向がある。逆に、純度の高い石鹸や昔ながらの製法で固く練り上げられたものは減りにくい。数字を見ると、価格の高い石鹸が必ずしも長持ちするとは限らないことが分かる。むしろ、硬めでシンプルな成分の石鹸の方が減りにくいという結果は、選ぶときの参考になる。
湿度以外の要因
湿度だけで石鹸の減り方が決まるわけではないことも分かった。一月の中で特に減りが少なかった日は、浴室を使った後に換気扇を長時間回した日と、暖房を切って窓を少し開けて寝た日だった。逆に、湿度の数字が同じでも、家族が続けてシャワーを使った日は減り方が大きかった。要するに、浴室の気温が高く、湿気がこもる状態が長く続くほど、石鹸は早く減るということである。
もう一つ気になったのは、石鹸の置き場所である。直接水がかかる棚に置いたものと、水はねが少ない端に置いたものでは、後者の方が平均して一五%ほど減りが少なかった。水切れが悪い場所では石鹸が常に湿った状態になるため、表面が溶け続けてしまう。数字を取ってみて初めて、置き場所の工夫が思った以上に効果的だと感じた。
計測から見えた節約と保管の工夫
一ヶ月間数字を追った結果として、石鹸を長持ちさせるには「湿度を上げすぎない」「水に触れる時間を減らす」の二点に尽きると感じた。具体的には、換気扇をこまめに回す、石鹸は水切りがよいラックに置く、家族が連続で使うときは石鹸を浴室から出して別の場所に保管するといった工夫が効く。特にロクシタンのような柔らかめの石鹸は、こうした保管方法の差が出やすい。
費用に換算すると、一個二〇〇円の石鹸が一日〇・二グラム減るのと〇・四グラム減るのとでは、一ヶ月でおよそ六グラムの差になる。金額としては小さいが、年間で見れば十二個近く石鹸を買い替えるか、変わらないかの違いになる。計測は単純だけれど、こうした小さな積み重ねが年間の消耗品を節約することにつながる。今後も二ヶ月目、三ヶ月目と続けて、季節ごとのデータもまとめてみたいと思う。同じように石鹸の減り方に関心がある人は、ぜひ湿度計とスケールを用意して一週間だけでも記録してみてほしい。思わぬ発見があるはずだ。